破裂

破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)

破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)

破裂 下 (幻冬舎文庫 く 7-3)

破裂 下 (幻冬舎文庫 く 7-3)


「廃用身」「無痛」の久坂部羊作品。
他に例のない超高齢化社会社会保障の予算は膨大。それらのことを考えるきっかけになる作品です。


無痛のようなサスペンステイストではなく、廃用身に近い医療問題の方に重心を置いている。
現実に起こっている老人介護の問題を、綺麗事なく突きつけてくる。いろいろ考えさせられる作品です。
現実に何か手を打たなければならない。だが何をする? 登場人物の厚生労働省の役人はとんでもないアイディアでこの事態を乗り切ろうとするが、情報を得れば得るほど「ありえない」と切り捨てられないところに怖さがあるんだと思う。


老人介護の問題だけでなく、医療裁判や、医師の不正などが平行して物語は進んでいくが、ちょっと手を広げすぎて本題がぼやけてしまった感はあるし、登場人物が描き切れていないような気もする。廃用身のように誰かひとりにスポットを当てた方が良かったのかも。主題は良いので惜しい。