失われた町 - 三崎 亜記

SFやファンタジーこそ、日常を丁寧に描かなくてはならないと思うんですよね。それが出来ていないと最初から最後までありえない世界で終わってしまい、読者はついていくことが出来ないわけですよ。少なくとも私はダメです。非日常にすんなり入っていくにはそれなりの準備が欲しいです。
さて本作。最初から非日常が展開していきます。こんな出だしだと一回落としてから盛り上げるのが定石で、本作でも宿の部分とかでそれなりにやってる感じはするんですがいかんせん世界設定をちゃんと説明し切れていないから消化不良のまま。あとセリフがなあ。なんて言うか、小説的じゃないというか。各章ごとの人称のちぐはぐさや、小難しい言い回し、作りこみ不足を感じる世界設定など、いろいろと気になって気になって仕方がない。それでも「町の消失」と言うテーマは面白いと思って頑張ったんですが。
「となり町戦争」では作者の職場であった役場がリアル(っぽく)かつコミカルに描かれていたことで、隣町との戦争という無茶なテーマが生きてきていたんですけど。

まあ、イマイチでした。
ライトノベルだと思って読めば良いんでしょうけど、だったら表紙はそれなりにしておいて欲しいなあ。

失われた町

失われた町 (集英社文庫)